エイプリールフールと仏教

さあいよいよ新年度が始まります。始まりと同時にやってくる行事が、4月1日のエイプリールフールです。「嘘をついても良い日」と言われているこの日には、よく子どものころに嘘をついて楽しんだものでした。ユーモアがあり、人に迷惑や混乱を与えなければ、嘘をつくのも、たまには良い潤滑油になるのではないでしょうか。しかし普段の日から嘘をついてばかりいると「閻魔様に舌を抜かれるぞ!」などと叱られます。いったいその閻魔様とはどういう人(?)なのでしょうか。

インド神話によると、死後の世界には善人の行く天上界と、悪人がやってくる地獄の世界があって、その地獄を支配するのが閻魔王なのだそうです。同時に閻魔様にはもう一つの役目があって、それは、死者を天上界に行かせるか、地獄行きにするか、それを決める裁判官の役目です。その裁判所には、浄瑠璃(水晶)の鏡があって、その鏡に死者の生前の悪業が全部映し出される仕組みになっています。地獄行きになったものには、閻魔様の部下の青鬼・赤鬼を使って、嘘を付いた人間の舌を抜いたり、罪人にドロドロに煮た銅汁を飲ませたり、ノコギリで切ったりするのです。

ああ恐ろしい、と思っても今から心を正して、嘘も付かず、悪いこともせず、殺生もしないようにしよう、などということが出来るでしょうか。今から気を付けようにも、過去には様々な悪業を繰り返してきたのが、煩悩にまみれる私たちです。そんな私たちは全員が地獄行きでしょうか。そんなことでは困りますし、仏教は死後の世界で救われて仏になる教えのはずです。一体どう理解したらよいのでしょうか。

そもそも私たちの中に善人など一人もいないのです。動植物の命を食料とし、欲も日に日に大きくなり、人を恨みねたみ、時には嘘も付く、こんな私たちに一人の例外もいません。そんな煩悩だらけの私たちを救いたいと願われているのが、阿弥陀さまです。

遠い昔、阿弥陀さまは仏になるときに「心から私の救済の働きを信じ、浄土に往生したいと願い念仏する、全ての人々を成仏させる」と誓ったのです。その誓いを果たすべく、今日も阿弥陀さまは私たちを救って下さるのです。ですから悪人、善人関わりなく念仏の教えを聞く私たちは、地獄に行くことはないということです。 

法律的・道徳的に悪を犯してならないのは言うまでもありません。しかし宗教的「悪」は、日常的で罪に問われることはありません。前述したその宗教的「悪」も犯さないに越した事はありません。ただその犯した罪をしっかりと自分で自覚し、反省し懺悔する。そして明日からは気を付けるようにする。それが仏教の教えを聞く私たちの正しい生き方です。

参考文献 仏教とっておきの話 新潮社