他宗での礼拝

新年あけましておめでとうございます。さてお正月といえば初詣に行く方も多いでしょう。
本来は家の菩提寺や自分と縁があるお寺にだけ、お参りをすれば良いのですが、近所に神社
があり、お参りすることが習わしであったり、観光として他宗のお寺や神社にお参りするこ
とも多いことでしょう。そこで自分の信じている宗派の拝み方で良いのか、神社には神社の
お参りの仕方が良いのか迷ってしまわないでしょうか。実は私も近所の神社にはお参りをし
ますし、観光目的で様々な神社やお寺にお参りをしてきました。他の社寺を見ることは大変
勉強になるのですが、さすがに他宗の作法をすることには抵抗があります。

 まず神社に出向いたときには、柏手を打つことが一般的ですが、必ずしも無理に打つ必要
はないと思います。神社仏閣と一つに語られる現在、仏教の拝み方(静かに手を合わせ合掌
、礼拝)をしても構わないと思います。ただ拝み方の見本が掲げてあるならばそれに従うべ
きかも知れません。もし口に念仏を称えるのなら周りの方に不快にならないよう、心の中に
称えるか、小さい声で称えるのがよいでしょう。浄土宗の開祖法然上人も「念仏は無理に他
人に聞かせるように大声で称える必要はない。自分の耳に聞こえる程度の声でよい」と述べ
られたそうです。ただし神社では「大願成就、交通安全、家内安全」などの御利益を享受出
来ると言われていますが、念仏の教えでは念仏は「称名報恩」といわれ、今の状態に感謝す
る意味で称えるので、御利益を期待するのは遠慮して下さい。

 次に他の宗派のお寺にお参りするときですが、当然柏手などは打たず、静かに胸の前で合掌
してください。そして特にこだわりがある方は、自分の宗派の念仏を称えても良いです。ただ
し上記のように他人様が不快にならないように、黙唱するくらいが良いと思います。

またそのお寺のご本尊やお題目を口に出すのも良いでしょう。これは決して自分の信じてい
る宗派を裏切り、他宗に心を奪われている状態ではありません。お寺それぞれに祀られている
本尊が違いますし風習も違います。同じ日本人としてあまり我が道を突き進まず、「所変われ
ば品変わる」「郷に居ては郷に従え」と言ったように、その場の作法に従った方が良いとも思
います。逆にお寺の側として考えますと、他宗の方がその作法でお参りをされたらあまり面白
くないのも事実です。

 これは他宗の葬儀や法事に参列したときにも同じ事が言えます。自分が信じる宗派の念仏を
しても構わないですが黙唱程度にしてください。また執り行っている宗派の作法に合わせて称
えることも良いと思います。焼香については以前も書きましたが、各宗派ごとに回数が決めら
れていますが、お坊さんから言われた回数や周りの方の回数に合わせた方がよいと思います。

気を付けてもらいたいのは、他宗の儀式に多く参列するあまり、自分の宗派の作法を忘れて
しまうことです。作法にはその宗派の伝統や深い意味が込められているので、是非自分の宗派
の作法をきっちり憶えておいて下さい。


                                                  (副住職 伊東 知幸)