散華(さんげ)

 法徳寺の法会では一年に一回「報恩講」の時にのみ行われる作法ですが、私の主管する八千代聖苑では住職の指導により、葬儀のたびに行う不思議な作法があります。それは葬儀の開始直後、赤、緑、白の紐がぶら下がった真鍮のおぼんのようなものを持ち立ち上がり、金色でお浄土の情景が描かれたコースターのような紙を、三奉請というお経の所々でまき散らすのです。儀式の最初に読み上げる三奉請は以下の内容です。

奉請弥陀如来入道場散華楽(阿弥陀如来の入場を請い願って、花をまき、音楽を奏でます)

奉請釈迦如来入道場散華楽(釈迦如来の入場を請い願って、花をまき、音楽を奏でます)

奉請十方如来入道場散華楽(十方の如来たちの入場を請い願って、花をまき、音楽を奏でます)

上の「散華楽」のところで何枚か紙を撒くのですが、床や棺の上に無造作に紙が散らばるので、初めて見る人は一体何をやっているのだろうと不思議がるかもしれません。でもこれも立派な浄土真宗の作法です。

 この「散華」という儀式、元は花籠に生の蓮の花びらを盛ってまいていましたが、いつしか綺麗なお浄土の情景が描かれたカードを用いるようになったそうです。その「お浄土の情景」というのがポイントで、蓮の花を「散華」し儀式の会場を清め、浄土世界に似通わせる意味があります。そうこれはお線香やお焼香の芳しい香りを満たすことと同じ意味になるのです。さらに言えば本堂の内陣も葬儀の祭壇(浄土真宗では特に荘厳壇という)もお浄土の情景を模したものですし、本堂や祭壇に飾る花も美しい花の咲くお浄土に少しでも近づける意味があります。つまり本堂や葬儀場をお浄土に似通わせることでその場を神聖な雰囲気にして、仏さまを呼び寄せることができるのではと考えたのだと思います。

 仏さまは「神通力」という力をお持ちだそうで、いつどこでもこの世に舞い戻って来ることができるそうです。皆さんの自宅にも、仏壇にも、もちろんお墓にも、お寺にもです。ただし私たちが「そんなことあるものか」と疑っていては、戻って来られないかも知れません。お浄土とこの世を行き来し「私のことを忘れてないか」と思っているかも知れません。そんな心配をさせないためにも残された私たちは、お念仏を称え故人の生前の思い出や功績を忘れないように暮らして欲しいと思います。