五観の偈

 先月上旬、私は仏教伝道協会が主催する、二泊三日の研修会に参加してきました。これは、各宗派
の意欲ある僧侶が集まって、各宗派の本山などで研修を行うという、いわば「プチ修行」みたいなも
のです。言うまでもなく私は浄土真宗ですが、浄土真宗だけの知識では将来広く活躍する僧侶として
の振る舞いに偏りが生じるとのことで、住職より命を受け参加してきたのです。今回は奈良の薬師寺
、法相宗の本山です。本山と言っても末寺も檀家も持たない、日本仏教初期に設立された寺院です。
そこで何があったか、詳しく話したら大変なことになるので、それは7月のニコニコ法話会で話しま
すから御勘弁ください。(その時使用したレジメは後日寺に置いておきます)

 そこで先月は浄土真宗の「食事のことば」を紹介しましたので、薬師寺で食事前に拝読した語句を
紹介したいと思います。

「五観の偈(ごかんのげ)」

主に禅宗において食事の前に唱えられる偈文。僧侶の食事作法のひとつですが、道徳的普遍性の高い
文章であるため禅に限らず多くの分野で引用されています。

 【偈文】(略訳)

 一には、功の多少を計り彼の来処を量る

(この食事がととのうまでの、多くの人々の働きに思いをいたします)

 二には、己が徳行の全欠をはかって供に応ず

(この食事を頂くにあたって、自分の行いが相応しいものであるかどうかを反省します)

 三には、心を防ぎ過を離るることは貪等を宗とす

(心を正しく保ち、あやまった行いを避けるために、むさぼりの心を持たないことを誓います)

 四には、正に良薬を事とすることは形枯を療ぜんが為なり

(この食事を、身体を養い力を得るための良薬として頂きます)

 五には、成道の為の故に今此の食を受く

(この食事を、仏様の教えを正しく成し遂げるために頂きます)

 どうですか?もはや私の説明など必要ないくらい判り易い文章です。

一、は食物の採取から加工、調理、配膳に至るまで多くの人の御足労によっていただけるということ
です。

二、は「働かざる者食うべからず」と言ったところでしょうか。勝手な自分を食前にあらためて反省
したいものです。

三、はできるだけ煩悩を持たないようにとのことです。必要十分な食事で満足しましょうという意も
あるでしょうか。

四、は食物が肉体を作り、力を沸かす元となることを言っています。

五、は楽しむための食事などではないことを言っています。あくまでも仏道に精進するための修行の
ひとつです。

浄土真宗で強調する「命の犠牲をいただく」という文が見当たらないのは、禅宗などではもともと「
精進料理」だからです。本来はそうあるべきですが、今や修行中以外は肉食をする時代になりました
。

私たちもできれば葬儀、法事などでは精進料理をいただきたいものです。