2月法話

「寿陵 」

先日、私の管理する霊園にあるお客さんがやってきました。定年を迎えた夫婦と娘さんで、墓地を探してあちこちの霊園を廻っているというのです。最近はあちこちに霊園ができ、新聞の折り込みチラシにもたくさん入ってくるので迷っているというのです。私は、うちは公園墓地と違いお寺が直接経営し充実した供養が受けられることや、南斜面にある立地の良さなどを説明し、後は墓石屋さんに任せたのですが、どういうことか、その人はうちの霊園を大変気に入っていただき、その日のうちに予約をして行かれました。

こういった事があるとお寺としてやりがいを感じるのですが、最近はその方のように、誰が亡くなったわけでもないのに、生前に墓地を購入しておくという方が増えています。昔はどの一家も村のお寺の檀家であり、不幸があれば一族の墓地に埋葬したものでしたが、今は次男三男は故郷を離れ都会に行き家族を持ち、そこが永住の地となることが多くなっています。ですから家族に亡くなった方が出ても、故郷の先祖と同じ墓に埋葬するということはなく、自ら新しい墓を建立する他無いのです。かといって気にせずにいていざ自分が亡くなったとなると、子供に重い負担がのしかかります。そうなる前に自分の入る墓を決めてしまおうというわけです。

これは一般に逆修墓、または寿陵といい、最近では墓地を購入する人の約40パーセントがまだ誰も亡くなった人がいない寿陵だと言われています。

なんでも古来より中国では寿陵が、「長寿」「子孫繁栄」「家内円満」の3つの果報を招くと言われているそうで、「まだ誰も亡くなった人がいないのに、墓地を購入するなんて縁起でもない」なんて思う人には、むしろ縁起が良いことなのだと思っていただきたいです。

確かに自分の入るお墓が決まっている方が、晩年を安心して過ごせるでしょうし、亡くなった後も子息に負担をかけずにできます。また墓地に関しては税金がかからないので、税金対策にもなるようです。

一部の公営墓地では購入の時点で、すでに埋葬すべき遺骨があることを条件にしているところがあるので、注意が必要です。

寿陵を建てたら、墓石に刻んだ自分の名前や法名は、朱色に塗っておきます。そして亡くなった時にこれを白や黒に塗り替えます。もちろん遺骨が入っていないからって、ほったらかしにしておいたら良くありません。正月や彼岸、お盆には、掃除を兼ね先祖が眠っている墓と同じようにお参りしたいものです。お墓は先祖供養をするだけの場所ではありません。自分を残してくれた遠い先祖に今の現状を報告し、感謝と反省をします。そしてこれからも見守ってくださいとの思いも込め、手を合わしてください。先祖と自分との対話の場所とでも言いましょうか。つまり仏壇やお寺参りと一緒だと思います。

自分の住む家がある場所に墓地を購入するということは、「私はこの土地を愛し骨をうずめる覚悟で生活をしている」という強い意志を感じます。
転勤の多い時代ですから現役中は考えもよらないでしょうが、定年を迎えた方には是非、寿陵を建てることをお勧めします。

                         善林寺 八千代別院主管 伊東知幸