西念寺

先月に引き続き、春の研修旅行で訪れたお寺を紹介します。 2ヶ寺目は「稲田の西念寺」です。

茨城県笠間市稲田にある西念寺は、浄土真宗別格本山と称し浄土真宗の単立寺院です。


親鸞聖人は越後での流刑が赦免になった後、京都へは帰らずに北関東を目指しました。

そして常陸の国(笠間市稲田)に草庵(寺よりも小さな僧侶の布教所)を開いたのでした。

その草庵跡に西念寺が建立されたのは後の事です。

親鸞聖人はこの地を拠点に常陸、下総、下野の三か国の中心に広く布教を行ったと言われています。

北関東に浄土真宗寺院は多くありますが、ここ西念寺だけは絶対に一度は訪れたい重要な寺院だと

思います。また当時の門弟たちの住所が、この草庵を中心とした30kmに収まることから、文字

通りこの地が布教の中心であったことがうかがえます。
 

境内は大きな杉の木の茂る静かな林の中にあり、葉の先に実を付けるという珍しい大銀杏の木が

本堂正面に立ちます。立派な本堂は私たち法徳寺とは、大きさも風格も比べようがありません。

境内から300m先には親鸞聖人が京都へ旅立つ際、門弟たちへの名残惜しさから、思わず振り

返ったという「見返り橋」という史跡があります。
 

そして重要なことは親鸞聖人がこの稲田にて、主著である「教行信証」の執筆を始め、その原型を

完成させたということです。

浄土真宗の教えの全ては「教行信証」に書き残されているということからも、親鸞は稲田の地で

臨終を迎えるかもしれないという覚悟で、多忙な布教の合間をぬって、教えをまとめあげようと

思い立ったのでしょう。
 

もちろん私達が拝読する「正信偈」も教行信証の中に記載されています。

膨大な引用を集めた「教行信証」を記すにあたり、常陸の国は中国の仏教書や「一切経」が案外

手に入りやすかったようです。

京都においては他宗の弾圧も厳しいでしょうが、天台・真言の寺院や鹿島神宮のある常陸の国は

弾圧も少なく、仏教書が手に入りやすかったようで、教行信証の執筆に専念できたことでしょう。

 他にも茨城周辺には親鸞聖人ゆかりの寺院がたくさんあります。

訪れたことのない方は機会があったら是非いくつかのお寺を巡ってみてください。
 

次回は教行信証の内容を簡単に説明したいと思います。

善林寺 八千代聖苑 主管 伊東知幸