”年の暮”

ともかくもあなた任せのとしの暮    

              小林 一茶

今年も残りわずかとなりました。毎年、この年の暮の頃になると、「あっ

という間の一年だったな。」「今年も色々なことがあったな。」とこの一

年、そして日々の暮らしを振り返ることが多くなります。

私たちの日々の生活は、常に時間に追われています。昼間は学校や

会社に行き、帰宅をすればテレビやコンピューターに向かい・・・と、

息つく暇がありません。そのような中で、改めて阿弥陀さまへのご恩に

感謝をするというのは、なかなか難しい事かもしれません。

ある人が、和上さまにお尋ねしたそうです。

「先生は、いつもいつも阿弥陀さまのことを考えていらっしゃるんです

か?」和上さまは、少し黙り込み、そしてこうおっしゃいました。

「昼間は、なかなか難しいのう。わしは夜、床に入ったときに、お念仏

が出てくる。」

 

年の暮というのは、正にこの床の中に入って、一日を振りかえるあの

ひとときと同じであるといえるのではないでしょうか。

そんな年の暮を詠んだ冒頭の句は、念仏者の俳人として知られる小林

一茶(1763〜1828)のものです。一茶は幼少の頃、母と死に別れ継母

に育てられました。その継母とうまくいかず、15才の時、江戸に奉公に

出されます。長年の苦労の末、俳句で身を立て、故郷に戻りますが、

この時、すでに51才。その後、結婚をし、長男が生まれますが、1ヶ月

で病死。次に長女が生まれますが、1年後に、またも病死をします。

この時、一茶57歳。一茶は、この悲しみのうちを「おらが春」という

句文集(文章と俳句でつづられるもの。)の中で、吐露しています。

その巻末に他力信心についての文と、その肝要として、この句が挙げ

られているのです。その日付は文政2年(1829)12月29日。一茶、晩年

の年の暮です。

「あなた任せ」のあなたとは阿弥陀さまのこと。改めて思い振りかえって

みれば、色々な出来事があった一年ではあったが、阿弥陀さまのおか

げにより今日まで、生きながらえてきた自分である。阿弥陀さまのご本

願に、ただおまかせするばかりだなあ。」

そんな一茶の心持ちが聞こえてくるような句です。

年の暮、忙しい中にも、ふと日々の生活を振り返るときです。阿弥陀さ

まへの感謝の気持ちとともに新たな年を迎えたいものです。

 

 法徳寺 副住職 伊東 法子